子どもの協力を引き出す5つのカギ:叱るより“つながる”子育てへ

子どもの協力を引き出すためにつながりを作る親子の様子

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子育ての中で「どうしてうちの子は言うことを聞いてくれないんだろう?」と悩むことは、どの家庭でも起こるものです。親としては、家事や仕事に追われながら、子どもに行動してほしいタイミングで協力してほしいのは当然です。しかし、急に指示をしたり、強い口調で伝えたりすると、子どもはただ“守ろうとしているだけ”のことがあります。
実は、子どもの協力を引き出すには、指示の前に“つながり(connection)”を作ることが最も大切だと言われています。さらに、心理学や脳科学の研究でも、子どもの自律性や行動への意欲は、親との関係性に大きく左右されることが分かっています。
本記事では、子どもの協力を引き出すための5つの実践方法と、背後にある科学的根拠を分かりやすく紹介します。今日から使える声かけや姿勢ばかりなので、ぜひご家庭で試してみてください。

また、子どもの成長を妨げやすい親の関わり方については、以前の記事 「子どもの学びを助けるには:やりすぎが成長を妨げる理由」 でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。


1. Connection(つながり):指示の前に、まず“つながり”をつくる

うまくいかないシーン

夕食の準備中に「片付けてねー!」とキッチンから叫ぶ。
……返事なし。
もう一度言う。さらに返事なし。
三度目にはイライラが限界に。ようやく子どもが動くが、しかめっ面で不満気。

親の立場から見ると「ただ片付けてほしいだけ」。
しかし子どもの世界では、突然遠くから声が飛んでくると、脳が「守り」の反応をしやすく、協力どころではなくなります。

どうすればうまくいくのか

指示の前に“つながる”。これは協力を引き出す最短ルートです。

  • 近くに行く
  • 目線を合わせる
  • 落ち着いた声で話す
  • 子どもの世界に入ってから指示する

例:「わぁ、すごいタワー作ってるね!そのブロック終わったら、一緒に片付け手伝ってくれる?」

命令ではなく、**“関係の中でのお願い”**になるため、子どもは自然と協力モードに切り替わります。

なぜこれが効くのか

脳科学や発達心理学の分野では、子どもが大人の指示に協力しやすくなるのは、「安心感」や「親とのつながり」がしっかりある時だと広く知られています。
親との関係が安定していると、子どもは気持ちを落ち着けやすく、自分の行動を調整したり、相手に合わせたりする力が育ちやすくなります。

また、親が近くに寄り添い、優しく声をかけることで、子どもの体の中ではストレスを高めるホルモンが下がり、安心や協力を促すと言われるホルモンが増えることが分かっています。
そのため、「つながり」をつくってから指示を出すと、子どもは自然と話を聞きやすい状態になり、無理なく協力できるようになるのです。


2. Collaboration(協力):命令より “協力作戦” で動いてもらう

うまくいかないシーン

寝る時間。
「歯磨きしてきて!」
→ 子ども「まだ眠くないー!」
「いいからしなさい!」
→ バトル開始。

親はただ正しいことを言っているだけなのに、子どもは反発……このギャップはどこから生まれるのでしょう?

どうすればうまくいくのか

子どもは、自分にちょっとした“選択肢”があるだけで、驚くほど協力しやすくなります。

例:

  • 「歯磨きとパジャマ、どっちを先にする?」
  • 「片付けるとき、ブロックから始める? それとも本から?」

「選ぶ」という行為が、子どもの中に自分で決めたという感覚をつくり、協力へとつながります。

なぜこれが効くのか

子どもは、行動を自分で選んだと感じられるときに、意欲や協力しようとする気持ちが高まりやすいことが、発達心理学の分野で広く知られています。
「選択できる」「自分で決められる」という感覚は、子どもの自立心や内側から生まれるやる気を大きく育てます。

反対に、大人から一方的に命令され続けると、子どもは「コントロールされている」と感じやすく、反発したり抵抗したりしやすくなると言われています。
そのため、小さな選択肢を与えるだけでも、子どもは“自分で動いている”という感覚を持ち、穏やかに協力できるようになります。

Mother and son brushing their teeth

3. Clarity(明確さ):曖昧な指示はNG。シンプルで具体的に伝える

うまくいかないシーン

「ちゃんとして」
「ふざけないの!」
「いい子にして!」

……と言っても、子どもは戸惑うだけ。
大人にとって当たり前の表現でも、子どもの脳には“抽象的すぎて理解できない指示”になります。

どうすればうまくいくのか

具体的でポジティブな指示に変える。

  • 「走らない」→「ゆっくり歩こうね」
  • 「ちゃんとしなさい」→「声を小さくして、椅子に座ろうね」
  • 「静かにして」→「お口はお休み、耳をお仕事モードにしてみよう」

また、毎日のルーティンを決めておくと、指示の回数が減り、移行(トランジション)が楽になります。
例:お風呂 → パジャマ → 歯磨き → 読み聞かせ など。

なぜこれが効くのか

子どもの脳はまだ発達の途中にあり、大人のように抽象的な表現を理解したり、否定形の指示を素早く処理したりすることが難しいことが、認知発達の分野でよく知られています。
例えば「走らないで」と言われると、子どもはまず「走る」という動作を思い浮かべ、それを止めるという複雑な処理が必要になります。

一方、「ゆっくり歩こうね」というように、やってほしい行動を具体的に伝えると、子どもはそのままの行動を選びやすくなります。
また、日常の流れ(ルーティン)が決まっていると、子どもの脳は次に何が起こるか予測しやすくなり、安心して行動できると言われています。

そのため、具体的で肯定的な指示や分かりやすい習慣づくりは、子どもの協力を引き出すうえでとても効果的です。


Mum watching her son try to ties his shoe laces

4. Competence(有能感):手を出しすぎない。できる喜びを奪わない

うまくいかないシーン

靴紐をゆっくり結ぶ子ども。
もたつく姿を見るとつい——「もういいから、やってあげる!」

親は善意でも、子どもは「ぼくにはできないんだ」「やってもらえばいいや」と学習してしまいます。

どうすればうまくいくのか

あえて手を出さない。子どもが試す時間を大切にする。

  • 「難しいよね。でもすごく近づいてるよ。もう一回やってみようか」
  • 必要なら“少しだけ”補助
  • できたときは、結果ではなく努力を褒める

なぜこれが効くのか

子どもは「自分でできた」という達成感を繰り返し味わうことで、自信や意欲が育つことが、教育心理学の分野で広く知られています。
人は、少し難しいことに挑戦し、それを乗り越えたときに、脳の中で達成や学びに関係する働きが強まり、「次もやってみよう」という前向きな気持ちが生まれやすくなります。

反対に、大人がすぐに手を出してしまうと、子どもは「自分にはできない」「やってもらえばいい」という感覚を持ちやすくなり、挑戦しようとする気持ちが弱まりやすいと言われています。

そのため、子どもが自分のペースで試し、工夫し、少しずつできるようになる経験を大切にすることが、長期的な自信や協力意欲につながっていきます。


5. Calm Leadership(落ち着いたリーダーシップ):怒鳴るより“落ち着いて導く”ほうが子どもは従いやすい

うまくいかないシーン

何度言っても動かない子ども。
ついに感情が爆発し——
「いい加減にしなさい!!」

子どもは固まり、泣くか怒るかのどちらかに。
もちろん動くことは動くけれど、関係には傷がつき、親自身も後悔しがちです。

どうすればうまくいくのか

落ち着いた声で、短く、明確に、そして一貫して伝える。
calm(落ち着き)は弱さではなく、最も強く安定したリーダーシップです。

例:「遊ぶのやめたくない気持ち、分かるよ。でも今は寝る時間。続きを明日の朝にしようね。一緒に行こう。」

なぜこれが効くのか

子どもは、大人の感情の影響をとても受けやすいことが、発達神経科学や心理学の分野でよく知られています。
親が落ち着いた声や表情で関わると、子どもの体や心もその落ち着きを“借りる”ようにして、気持ちが安定しやすくなります。これを「共調整(コレギュレーション)」と呼び、子どもの自制心や情緒の発達に欠かせない働きです。

反対に、怒鳴られたり、強い口調で急かされたりすると、子どものストレス反応が高まり、話を聞いたり考えたりする力が一時的に低下すると言われています。

そのため、大人が落ち着いた態度で一貫して伝えるほど、子どもは安心して大人の言葉を受け取りやすくなり、自分でも落ち着いて行動する力が育っていくのです。


Conclusion(まとめ)

子どもの協力を引き出す鍵は、叱ることでも完璧に指示することでもありません。
つながり・選択肢・明確さ・自己効力感・落ち着いたリーダーシップ——
この5つが揃うと、子どもは自然と「協力したい」と感じられるようになります。

子育ては毎日の積み重ねです。
今日からひとつだけでも取り入れて、親子の関係がより優しく、より協力的な方向へ育っていくきっかけにしてみてください。

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