子どもの学びを助けるには:「やりすぎ」が成長を妨げる理由

Parent hovering over their child

この記事をシェアする

親として、誰もが心から願っていることがあります。それは、自分の子どもが将来、自信を持ち、能力のある大人として、社会のさまざまな課題に立ち向かえるようになることです。
私たちは子どもに、自立した考え方や問題解決力、そして困難に負けないしなやかな学びの姿勢を身につけてほしいと思っています。

ところが、日々の勉強のサポートや宿題の手伝い、読みの練習などの場面では、どうしても目先の成果に目が向きがちです。「正解させてあげたい」「失敗させたくない」「今この瞬間を気持ちよく終わらせたい」——こうした思いから、つい子どもに手を差し伸べてしまいます。
しかし、それが積み重なると、子どもが本当に必要な「長い目で見た力」を育てる機会を奪ってしまうことがあるのです。

ここでは、親が子どもの勉強を助けるときによく陥りやすい6つの習慣を紹介します。いずれも愛情から生まれる行動ですが、長期的には子どもの成長を妨げてしまうことがあります。そして最後に、その習慣をどう変えていけば、子どもの自立心や自信、学ぶことへの前向きな気持ちを育てられるのかを提案します。


最もよく見られるのが、子どもが間違えた瞬間にすぐ正解を教えてしまう行動です。例えば子どもが単語を発音し間違えたとき、親がすぐに「こう言うんだよ」と口をはさんでしまいます。親としては「間違ったまま覚えてしまわないように」という善意からの行動ですが、これは学びにおいて非常に大切な「自己修正」の機会を奪ってしまいます。正しい発音や音の確認には、Rocket Englishのフォニックス辞典も活用できます。

大人も会話の中で言い間違いをしますよね。しかしその直後に、「あれ?今の言い方は変だったな」と脳が自動的に気づき、自分で言い直すことが多いはずです。これはごく自然な「自己モニタリング」の働きであり、言語だけでなくあらゆる課題解決に不可欠な力です。

子どもも同じように、自分で「気づく→直す」という経験を重ねる必要があります。親が常に先回りして答えを与えてしまうと、その力が育たず、自分の力で考え直す自信が持てなくなってしまいます。教育現場でも、間違いを直接正すのではなく、子どもが自分で気づき修正できるよう促す指導法が推奨されています。

長期的に大切な理由

  • 自己認識が育つ:自分の言葉や行動を振り返り、誤りに気づけるようになる。
  • 記憶が強化される:正解を自分で探す過程が記憶を深める。
  • 粘り強さが身につく:間違いを修正できると学べば、失敗を恐れなくなる。

親ができる工夫

  • すぐに答えを与えず「今のは正しいと思う?」と問いかける。
  • 「もう一度読んでみよう」とやり直すチャンスを与える。
  • ヒントを小出しにする:「最初の文字の音はなんだったかな?」

1990年代、心理学者のキャロル・ドゥエック博士が行った研究は、教育現場に大きな影響を与えました。
博士は子どもたちにパズルを解かせ、一部の子には「頭がいいね」と才能をほめ、別の子には「よく頑張ったね」と努力をほめました

その後、もっと難しいパズルに挑戦させたところ——才能をほめられた子どもたちは自信を失いやすく、挑戦を避けてすぐ諦めてしまったのに対し、努力をほめられた子どもたちは粘り強く取り組み、より良い結果を出しました。

この実験が示したのは、「結果や才能をほめることはやる気を削ぐ一方で、努力をほめることは挑戦への意欲と粘り強さを育てる」という事実です。これが、後に博士が提唱した「グロースマインドセット(成長思考)」の土台となりました。

長期的に大切な理由

親ができる工夫

  • 結果ではなく「過程」をほめる。
  • 「難しかったのに最後までやり遂げたね」
  • 「工夫して考えたね」
  • 「一生懸命書いたのが伝わってきたよ」

宿題は家庭で最もストレスになりやすい場面の一つです。親としては「きれいに、正しく、基準に合った形で提出させたい」と思うのは自然なことです。しかし、過剰な宿題は子どもに大きなストレスを与え、学習意欲や生活リズムにも悪影響を及ぼすことが指摘されています。ですが、答えを書き直したり、間違いを直したり、場合によっては宿題を全部やってしまったりすることは、実は子どもの学びにとって大きなマイナスになってしまいます。

まず一つ目に、それは子どもから「自分で考え、失敗から学ぶ機会」を奪ってしまうということです。間違いは本来、とても価値のあるものです。「まだ理解できていない部分」を示してくれるからこそ、改善や成長につながります。親が全て整えてしまうと、子どもはその過程を経験できず、「成功は自分の努力ではなく、大人に助けてもらうことで得られるものだ」と思い込んでしまう恐れがあります。

次に、宿題が本来持つ「先生への報告」の役割が失われてしまいます。先生は宿題を通じて、子どもが何を理解していて、どこでつまずいているのかを把握します。しかし、宿題が「完璧」に見えてしまうと、先生は子どもがすでに内容を理解していると勘違いし、次の段階に進めてしまいます。これは、まるで「ぐらぐらした基礎の上に家を建てる」ようなものです。研究によると、親の宿題サポートは学力に大きな影響を与えないことが分かっています。一見順調に進んでいるように見えても、理解の穴はやがて大きな壁となり、子どもを苦しめることになります。

長期的に大切な理由

  • 弱点が隠れてしまう:先生が本当の課題に気づけなくなる。
  • 土台が不安定になる:基礎が固まらないまま進むことで、後に大きな混乱を招く。
  • 自立心を損なう:「自分でやる」という経験がなくなり、依存的になってしまう。
  • 努力を避ける傾向に:難しい部分は「誰かがやってくれる」と思うようになる。

親ができる工夫

  • 宿題の「完成度」よりも「取り組みのプロセス」を大切にする。
  • 近くで見守り、集中を支える。
  • 「次はどうするのかな?」「この答えをどうやって確かめられる?」など、導きの質問を投げかける。
  • 間違いはそのままにして提出させ、先生に見てもらう。

子どもが質問に答えるとき、数秒間考え込むことがあります。そのとき、多くの親はすぐに答えやヒントを出したり、質問を言い換えてしまいます。気遣いからの行動ですが、実はこの「考え込んでいる沈黙」こそが、学びにとって最も重要な時間なのです。

沈黙は失敗ではありません。それは「思考の時間」です。その数秒間に、子どもは記憶を呼び起こし、頭の中で答えを組み立て、勇気を出して自分の言葉で表現しようとしています。一時的に混乱したり迷ったりすることも、より深い理解につながります。詳しくはこちらの記事でも解説しています。

大人が先に答えを出してしまうと、子どもは「待っていれば誰かが助けてくれる」と学習してしまい、自分で考え抜く経験を失います。

長期的に大切な理由

  • 主体性の喪失:自分で考える機会がなくなり、依存心が強まる。
  • 自信の低下:「自分でできる」という達成感を味わえない。
  • 大人になる準備不足:社会に出たとき、自分で答えを出す力が育たない。

親ができる工夫

  • 待つ習慣:質問したら、5秒〜10秒は黙って見守る。
  • 励ましの言葉:「ゆっくりでいいよ」「自分でできると思うよ」と声をかける。
  • 助けすぎない:沈黙を恐れず、子どもに考え抜く経験をさせる。

親にとって、子どもが困って泣きそうになったり、宿題をしている時に鉛筆を投げたりする姿ほど胸が痛むものはありません。そんな時、すぐに手を差し伸べて問題を解決してあげたくなるのは自然なことです。「守ってあげたい」「辛い思いはさせたくない」という気持ちは当然です。

しかし本当のところ、フラストレーション(もどかしさや苛立ち)は「敵」ではありません。むしろ、学びに欠かせない大切な一部です。子どもが苦戦しているその瞬間こそ、脳は最も活発に働き、つながりを作り、成長しています。親が常に救いの手を差し伸べると、子どもは「自分で困難を乗り越える経験」を奪われてしまいます。過干渉は子どもの自立心を奪い、成長の機会を妨げることが心理学的にも指摘されています。

思い出してください。赤ちゃんが初めてハイハイをしたり、歩こうとした時のことを。すぐにうまくできる子はいません。何度も転んで、泣いて、悔しがって……それでも立ち上がって挑戦を繰り返します。誰もが経験するその小さな「挑戦」が、実は強い「やり抜く力(grit)」を育てているのです。

学習の場面でも同じです。フラストレーションを完全に取り除くことは、目先の安心感は与えますが、長い目で見れば子どもから大切な粘り強さを奪ってしまいます。

長期的に大切な理由

  • レジリエンス(回復力)が育つ:困難にぶつかっても立ち直れる。
  • 自己調整力を学ぶ:気持ちを落ち着け、再挑戦する方法を身につける。
  • 将来への備え:大人になってから出会う様々な壁を乗り越える準備になる。

親ができる工夫

  • 気持ちを認める:「難しいね、悔しいね。でもそれは大丈夫なことだよ」と共感を伝える。
  • ステップに分ける:「最初の部分だけ一緒にやってみよう」と少しずつ進める。
  • 粘り強さを見せる:親自身が挑戦する姿を見せる(料理、修理、新しいことへの挑戦)。子どもは「努力する大人の背中」から学ぶ。

子どもは社会的な場面で、答えるまでに時間がかかることがあります。レストランで注文を聞かれたり、大人から挨拶された時など、返事に少し沈黙が生まれることは自然なことです。しかし、多くの親は気まずさを避けるために先回りして答えてしまいます。その結果、子どもは「自分の声を出す機会」を逃してしまいます。

さらに問題なのは、親が無意識に子どもにラベルを貼ってしまうことです。たとえば友人が子どもに話しかけたとき、親が「この子、人見知りで大人には話さないんです」と説明する。親としては場を和ませようとしたのかもしれませんが、子ども自身には「自分は人見知り」「話せない子」というイメージが強く刻まれてしまいます。

長期的に大切な理由

  • 機会の喪失:話す練習のチャンスが減り、表現力が育たない。
  • 自己認識の固定化:「私は恥ずかしがり屋だ」という思い込みにつながる。
  • 自信と主体性の育成:自分で答える経験を積むほど、社会的な自信が育つ。

親ができる工夫

  • 待つ勇気:答えるのに時間がかかっても待ってあげる。沈黙は「準備の時間」。
  • やさしく促す:「自分で言ってみよう」「言えるよ」と背中を押す。
  • ラベルを避ける:「人見知り」ではなく「まだ慣れていないだけ」「少し時間がかかるけど大丈夫」など、前向きな言葉に変える。

私たち親が心から願っているのは、子どもが将来、自分の頭で考え、問題を解決し、自信を持って人生の困難に立ち向かえるようになることです。その力は一朝一夕で身につくものではありません。日々の小さな積み重ねの中で、子どもが自分の力で答えを探し、間違いに気づき直し、悔しさを乗り越える経験を重ねることで育まれていきます。

本当に子どもを助けるとは、すべてを簡単にしてあげることではなく、あえて一歩引いて「自分でできる力」を信じて見守ることです。そうした関わり方が、子どもの自立心と学びへの前向きな姿勢を育てます。

Rocket Englishでも同じ考え方を大切にし、子どもたちが「自分で考え、自分でできた!」と実感できるようなレッスンを提供しています。無料体験レッスンはこちらからお申し込みいただけます。

ニュースレターに登録する

最新のお知らせ、ニュース、アドバイスなどが届きます

他の記事も読む

英語学習で「少しの混乱」が子どもにとって大切な理由
保護者アドバイス

英語学習で「少しの混乱」が子どもにとって大切な理由

ロケットイングリッシュスクールでは、保護者の方から「子どもが授業で全部は理解できていないみたいです」という声をいただくことがあります。最初は不安に思えるかもしれませんが、。。。

boy and girl playing an English video game
保護者アドバイス

おうち英語に最適!無料で遊べる英語学習ゲーム5選

楽しいから続く!学びが習慣になる
子どもは楽しいことに夢中になります。「英語を勉強する」よりも、「ゲームで遊んでいたら英語も覚えていた」というスタイルが、。。。

さらに詳しく知りたい方は

こちらの「コンタクト」ボタンよりご覧ください

Girls smiling and playing a card game